夏のあいだ、よく着た服。
そろそろしまう時期になってきました。
たたみながら、「あれ、こんなに色が褪せていたかな」と気づくこと、ありませんか。
襟や脇のあたりが、うっすら黄ばんでいたり。
そのまましまってしまうと、来年また同じ気持ちで手に取ることになります。
この記事では、しまう前に確認しておきたいことをまとめました。
染め直しで戻るもの、戻らないものの見分け方です。
そしてもうひとつ、お伝えしたいことがあります。
染め直しに出すなら、その服を着ない時期がおすすめです。
理由は後ほどご説明します。
目次
まず、傷みの種類を見分ける
ひとくちに「くたびれた」と言っても、原因はいくつかあります。
染め直しとの相性が変わりますので、まず見分けてみてください。

全体の色褪せ
日に当たる、洗濯を繰り返す。
そうして少しずつ色が抜けていきます。
夏物は着る回数も洗う回数も多いので、いちばん起こりやすい傷みです。
襟や脇の黄ばみ
汗と皮脂が残り、時間が経って黄色く変わったものです。
白い服ほど目立ちます。
部分的なシミ
食べこぼし、飲みもの、日焼け止めなど。
原因によって落ち方が変わります。
漂白剤による色抜け
シミを取ろうとして漂白剤を使い、その部分だけ色が抜けてしまったもの。
夏物の白いシャツやTシャツで、よくあるご相談です。
染め直しで戻るもの、戻らないもの
染め直しは「色を入れ直す」仕事です。
そのため、できることとできないことがはっきり分かれます。

色でカバーできること
- 全体の色褪せ
- 襟や脇の黄ばみ
- 漂白剤で抜けてしまった部分
黄ばみや色抜けは、濃い色を選ぶことで目立ちにくくできる場合があります。
海松色、憲法黒、藍染めなど、色の濃いものが候補になります。
ただし、色の差が完全に消えることをお約束するものではありません。
染め直しでは直らないこと
- 生地そのものが薄くなっている
- 穴、擦り切れ
- 伸びてしまった襟ぐりや袖口
- 縫製のほつれ
これらは染めても変わりません。
染め直しは、生地を元に戻す仕事ではないためです。
シミについて
シミは、種類によって扱いが変わります。
染め直しでシミを「消す」のではなく、色で「目立たなくする」という考え方になります。
詳しくは別の記事でご説明しています。
素材を確かめる
染め直しができるのは、基本的に天然繊維です。
- 綿
- 麻
- シルク(絹)
- ウール
- レーヨン
- キュプラ
ポリエステルやナイロンなどの化学繊維は、基本的に染まりません。
混紡の場合は、天然繊維が50%以上のものが対象です。
化学繊維の部分は染まらないため、全体として薄く見えたり、杢調のような仕上がりになることがあります。
品質表示のタグを見ていただくと、素材が分かります。
素材ごとの詳しい注意点は、こちらにまとめています。
ウールは特に注意が必要です
ウールは染め直しできる素材ですが、扱いが難しい部類に入ります。
染めの工程で縮んだり、繊維が絡んでフェルトのように硬くなったりする可能性があるためです。
そのため、当店では構造や厚み、状態を見たうえで判断しています。
実際にウールのコートを染め直した際の工程を、こちらで詳しくご紹介しています。
しまう前の、判断の手順
ここまでを踏まえて、順に見ていくと判断しやすくなります。

1. 来年も着たいと思える服ですか
デザインが好き、着心地がいい、思い入れがある。
そう思える一枚だけで十分です。
迷うものは、無理に染め直さなくてかまいません。
2. 素材は天然繊維ですか
タグを確認してください。綿・麻・シルク・ウールなど。
3. 生地そのものは傷んでいませんか
薄くなっていないか、穴がないか。
生地が弱っていると、染めの工程に耐えられないことがあります。
4. 気になるのは「色」ですか
色褪せ、黄ばみ、色抜けであれば、染め直しの出番です。
形崩れや破れであれば、染めても解決しません。
この4つを確認して、迷うところがあればご相談ください。
判断が難しい品ほど、実物を見せていただくのが確実です。
夏物ならではの注意点
麻と綿が混ざっている場合
夏物では、表地が麻、別布が綿というつくりをよく見かけます。
どちらも染まりますが、麻と綿では染料の入り方が異なります。
そのため、同じ一着の中でも素材によって色の濃淡が出ることがあります。
これは不良ではなく、天然素材の染めではよく起こることです。
市販の染料で直したことがある服
漂白剤で色が抜けた部分を、ご自身で市販の染色剤を使って補修された服。
このような品は、特にご相談時にお伝えください。
染色剤の成分が生地に残っていると、当店の染料と反応して、その部分だけ濃く染まることがあります。
実際に、補修した部分の周囲がにじんだように濃く発色した事例がありました。
事前に分かっていれば、色の選び方などで対応できることもあります。
白い夏物を染める場合
白いシャツやTシャツは、染め直しで大きく印象が変わります。
黄ばみが気になる白物は、染め直しに向いている一枚です。
染め直すなら、着ない時期がおすすめです
ここが、今回いちばんお伝えしたいことです。
染め直しは、お預かりしてから作業の日数をいただきます。
着たい季節のさなかに出すと、その服を着られる期間が短くなってしまいます。

たとえば夏物を7月に出すと、戻ってくる頃には夏が終わりかけています。
一方、いまの時期にお預かりできれば、来年の夏には万全の状態でお使いいただけます。
しまう前に決めてしまうほうが、結果として長く着られます。
「来年でいいか」と思ってしまい込むと、次に手に取るのは来年の夏です。
そのときには、また着る時期のさなかになっています。
服をしまうタイミングは、染め直しを考えるのにいちばん向いています。
冬物も同じです。春にしまうときが、染め直しどきです。
費用の目安
染め直しの料金は、1点ごとの重量で決まります。
| 重量 | 料金(税込・1点) |
|---|---|
| 300g未満 | 4,400円 |
| 300g以上600g未満 | 6,600円 |
| 600g以上800g未満 | 8,800円 |
| 800g以上1000g未満 | 11,000円 |
憲法黒をご希望の場合は、1点につき2,200円が加わります。
上下セットの品も、それぞれ1点として計算します。
送料は品物によって異なりますので、ご相談の際にご案内します。
迷ったら、ご相談ください
染め直しでは、「素材として染められるか」と「満足していただける仕上がりになるか」を分けて考えています。
染められる素材であっても、服の構造や厚み、芯地、縫製、元の色、使用状況によっては、染めムラや型崩れ、風合いの変化が起こることがあります。
そうした場合は、「染められます」だけでお受けすることはしません。
どんなリスクがあるのかをお伝えしたうえで、ご判断いただいています。
当店として納得できる仕上がりが難しいと判断した場合は、お断りすることもあります。
写真を送っていただければ、おおよその見当をお伝えできます。
品質表示のタグも一緒に写していただけると、より正確にお答えできます。
すでに内容がお決まりの方は、オンラインショップからご注文いただけます。
重量の区分と色をお選びください。
はじめての方は、まずご相談いただくほうが安心です。
おわりに
夏のあいだ活躍した服を、そのまましまう前に。
色褪せや黄ばみが気になる一枚があれば、染め直しという選択肢があります。
色は入れ直せますが、生地そのものは戻りません。
判断に迷うものは、遠慮なくご相談ください。
そして、染め直しに出すなら着ない時期が向いています。
いまの時期にお預かりできれば、来年の夏を気持ちよく迎えられます。
捨てる前に、もう一度着られる方法があります。
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