夏休みのある日、ご家族で染め体験にお越しくださいました。
4人でお越しいただきましたが、いちばん下のお子様はまだ小さいため、この日は3名での体験です。
お父様、お母様、そして小学4年生の男の子。
3人ともとても仲が良く、終始楽しそうにされていたのが印象に残っています。
選ばれたのは、ベンガラ板締め絞りです。
同じ技法で、同じ日に、同じ場所で染めた3枚。
それが、驚くほど違う表情になりました。
今日はその様子をご紹介します。
目次
ベンガラ板締め絞りとは
はじめに、どんな体験かを簡単にご説明します。
約1メートルの伊勢木綿の手ぬぐいを、決まった形にたたみます。
たたんだ布を版木ではさみ、万力でしっかりと締めます。
締めた部分には染料が入りませんので、そこが白く残ります。
あとは筆で、好きな色をのせていきます。
そして最後に、板を外して布を開きます。
このとき、たたんだ形に沿って柄が現れます。
開くまで、どんな表情になるかは分かりません。
そこがこの体験のいちばんの見どころです。
小学4年生の男の子|蓮の葉絞り

息子さんが選ばれたのは、蓮の葉絞りという柄です。
これは、たたみ方がなかなか難しいものです。
正直に申し上げますと、大人の方でも手こずることがあります。
折る回数が多く、しかも折り目を正確に合わせていく必要があるためです。
一度ずれてしまうと、そのあとの折り目も少しずつずれていきます。
ところが息子さんは、一度お教えしただけで、最後までご自分で折りきってしまいました。
途中で手を貸すこともなく、静かに集中されていました。
見ていて、こちらが感心してしまいました。
色の付け方が、また見事でした
折りの正確さも驚きましたが、色の付け方にも目を見張りました。
藍色、茜色、深川色。
この3色を使いながら、それぞれの色に濃淡をつけておられます。
同じ藍色でも、濃いところと薄いところがある。
その差が、開いたときに奥行きになって現れます。
配色の組み合わせもきれいで、まるで大人が手がけたような仕上がりでした。
小学4年生とお聞きして、あらためて驚いた一枚です。
お父様|藍色一色で

お父様も、息子さんと同じ蓮の葉絞りを選ばれました。
親子で同じ柄を選ばれるというのは、なかなか良いものです。
ただし、色の選び方はまったく違いました。
お父様は、藍色の一色だけで染められています。
一色と聞くと、単調になりそうに思われるかもしれません。
ところが、実際に開いてみると、そうではありませんでした。
濃く入れたところ、薄く入れたところ。
その濃淡が、一色の中に豊かな変化を生んでいます。
色数を増やさずに表情をつけるというのは、実はなかなか難しいことです。
淡いところがあるからこそ、濃いところが締まって見える。
そういう関係が、この一枚にはよく出ていました。
落ち着いた、静かな佇まいの手ぬぐいになったと思います。
お母様|丸つなぎ柄

お母様が選ばれたのは、丸つなぎという柄です。
こちらは、円がいくつも連なって現れる柄です。
蓮の葉絞りとはまた違い、やわらかく、のびやかな印象になります。
お母様は、ウコン色、茜色、緑土色を使われました。
面白いのは、色の入れ方に強弱をつけておられたことです。
はっきりと濃く入れた丸もあれば、ふわりと淡く仕上げた丸もある。
その差があることで、全体が単調にならず、味わいのある一枚になっています。
規則的に並んだ柄の中に、こうした揺らぎがあると、目が飽きません。
天然染料ならではの、やさしい色の重なりも出ていました。
3枚を並べてみると

体験が終わったあと、3枚を並べてみました。
同じ日に、同じ道具で、同じように染めた3枚です。
それなのに、まったく違う。
息子さんの多色づかい。
お父様の藍色一色。
お母様のやわらかな丸つなぎ。
どれも、ベンガラ染めらしい落ち着いた色合いでありながら、それぞれの個性がはっきり出ています。
正直に申し上げますと、私はこういう仕上がりがとても好きです。
派手さで目を引くのではなく、色の重なりや濃淡で見せる。
天然染料の持ち味が、素直に出ていると思います。
ベンガラは、土に含まれる成分をもとにした顔料です。
そのため、鮮やかすぎない、少しくすんだ色合いになります。
その落ち着きが、3枚それぞれの表情を引き立てていました。
親子でお越しになる方へ
今回のご家族のように、親子でお越しいただくことがよくあります。
そこで、ご参考までにお伝えしておきたいことをまとめます。
お子様の年齢について
板締め絞りは、たたむ工程と、筆で色をのせる工程に分かれます。
たたむところは少し難しいので、小さなお子様には親御さんの補助が必要です。
今回の息子さんのように、小学校中学年くらいになると、ご自分で最後までできる方もいらっしゃいます。
もちろん個人差がありますので、難しそうな場合は店主がお手伝いします。
手ぶらでお越しいただけます
板締め絞りは、約1メートルの伊勢木綿の手ぬぐいが体験料金に含まれます。
そのため、染めるものをお持ちいただく必要がありません。
旅行やお出かけの途中でも立ち寄っていただけます。
服装について
染料が服につくことがあります。
エプロンのご用意はありませんので、汚れても差し支えのない服装でお越しください。
必ず汚れるわけではありませんが、念のためお伝えしています。
仕上がりについて
天然染料の仕上がりは、一点ごとに変わります。
同じ柄を選び、同じ色を使っても、まったく同じものにはなりません。
今回の親子3人の作品が、その良い例だと思います。
希望どおりの色や柄をお約束するものではありませんが、そこがこの体験の面白さでもあります。
3つの染め体験について
染め屋 貴久では、ベンガラ板締め絞りのほかにも体験をご用意しています。
ご自分の服や布を持ち込んで染めていただく体験もあります。
どれを選ぶか迷われる方が多いので、違いを別の記事にまとめました。
ベンガラ板締め絞りのご案内
今回ご紹介した体験の内容です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 料金 | 1名 2,800円(税込・通常料金) |
| 所要時間 | 90〜120分が目安 |
| 参加人数 | 1〜15名 |
| 染めるもの | 約1mの伊勢木綿の手ぬぐい(料金に含まれます) |
| 柄 | 麻の葉・丸つなぎ・七宝つなぎの3種類から |
| 場所 | 大阪府池田市栄町6番17号(阪急池田駅から徒歩5分) |
柄と使える色数は、当日に完成見本をご覧いただきながらご説明します。
そのうえで、お好みの柄をひとつお選びください。
内容をご覧になってご予約いただける方は、こちらからどうぞ。
お子様の年齢や人数のことなど、迷っていることがあれば、予約の前にお気軽にご相談ください。
おわりに
夏休みの一日を、染めの時間に使っていただきました。
小学4年生の息子さんが、大人でも難しい折りを一度で覚えてしまったこと。
お父様が、一色だけで奥行きのある一枚を仕上げられたこと。
お母様が、規則的な柄の中に揺らぎをつくられたこと。
どれも、その日その場でしか生まれなかったものです。
染め上がった手ぬぐいは、そのままお持ち帰りいただけます。
使うたびに、この日のことを思い出していただけたら嬉しく思います。
ご家族3人でお越しいただき、ありがとうございました。
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