お気に入りの服が、なんだか色あせてしまっている…。
そんな時、あなたならどうしますか?
この記事では、気に入ってご愛用されていた白い綿シャツを「鴇色(ときいろ)」に染め直した実例をご紹介します。
お客様からいただいた声や、染め直しに込めた想い、色や染料の文化的背景、そして実際の染色工程まで、丁寧にお伝えします。
目次
この記事を読むべき人
- 大切な服を、もう一度着られる形で残したい方
- 色あせたお気に入りを、リメイクではなく「再生」したい方
- 草木染めや天然染料に興味がある方
- 環境にやさしい方法でおしゃれを楽しみたい方
- “服”をただのモノではなく、“記憶”として大切にしたい方
染め直しのご依頼:白シャツを「鴇色(ときいろ)」に

今回お預かりしたのは、白い綿素材のジャガード織のシャツ。
長く大切に着てこられたお気に入りの一枚ですが、全体的に色あせ、少し印象を変えてみたくなられたようです。
「服の雰囲気を変えて、また新たな気持ちで着たい」
そんなご希望を受けて、今回はインド茜(あかね)を使い、やわらかく上品な「鴇色(ときいろ)」に染め直すことになりました。
鴇色(ときいろ)という色の魅力と、名前にこめられた物語

「鴇色(ときいろ)」は、朱鷺(とき)という鳥の羽に由来する淡紅色の伝統色です。
朱鷺は全体が白い羽で覆われた美しい鳥ですが、翼の先端や尾羽の一部には、ほのかに紅色が差しており、
そのやわらかくも品のある紅色を指して「鴇色」と呼ぶようになりました。
この色には、主張しすぎない美しさと静けさがあり、日本らしい感性が息づいています。
まるで秋の夕焼けのように、壮大でありながらも繊細なグラデーションを感じさせる色です。
今回のシャツも、白の下地が透けることで、淡い桃色と生成りが交差するような、自然な奥行きのある一着に仕上がりました。
染料としての「インド茜」とは?

「インド茜(あかね)」は、マメ科の植物の根を使った天然の赤系染料です。
世界最古の植物染料のひとつとも言われており、インド・中東・東アジアにおいて紀元前から使用されてきました。
日本でも『万葉集』の中に「あかねさす…」という表現が登場します。
これは「日」や「照る」などの枕詞であり、太陽が高く照らす日の、空の明るく赤みがかった輝きを表現する言葉です。
インド茜から得られる色は、黄味を帯びた、あたたかく自然な赤。
染め方や媒染によって、濃くも淡くも染め分けることができ、「鴇色」のような繊細な色合いも表現可能です。
染め直しの実際の工程:ミョウバン媒染で鴇色に染める
1. 前処理(お湯洗い)
長く着用された衣類には、目に見えない汗・皮脂・タンパク質などの汚れが繊維に残っていることがあります。
これが染料と反応して濃いムラになることがあるため、まずは60℃前後のお湯でしっかりと洗浄します。
汚れをできるだけ取り除くことで、均一で美しい染め上がりが期待できます。
2. 媒染(ミョウバン溶液)
染色における“媒染”とは、布に色素を定着させ、発色を安定させるための大切な工程です。
今回はミョウバン(明礬)を媒染剤として使用しました。
ミョウバンはアルミニウムを含む天然の鉱物で、淡い色合いを引き出すのに適した、古くから使われてきた媒染剤です。
布をミョウバン溶液に浸けたあと、じっくりと馴染ませ、乾かします。
3. 染液の準備(インド茜の抽出)
インド茜の根を乾燥させ、細かく刻んだものをお湯に入れて煮出します。
茜の色素は約80℃前後でゆっくり抽出されるため、煮出し時間も丁寧に調整します。
何度か染液を取り分けて濃度を確認し、鴇色に合う淡い赤色を整えます。
4. 染色(布を染液に浸す)
前処理と媒染を済ませた布を、染液に浸します。
温度を約60〜70℃に保ちながら、布を絶えずゆっくり動かしてムラを防ぎつつ、色を均一に染み込ませていきます。
数回に分けて染液に浸けることで、ふんわりとした色の層が重なり、奥行きある鴇色が現れてきます。
5. 仕上げと乾燥
染め上がったら、水で余分な染料を丁寧に洗い流し、陰干しでじっくりと乾燥させます。
このときの風通しや湿度にも気を配りながら、色をしっかりと定着させていきます。
染め直しのメリットとは?


- 色あせやくすみをカバーして、見違えるような一着に
- 新しい印象を加えながらも、元の思い出はそのまま
- 服を捨てずに活かすサステナブルな選択
- 一点ものとしての個性と、自然な風合い
- 「あの時の服」を、今の自分がまた着られるという喜び
お客様からも、こんなお言葉をいただきました。
おはようございます。
商品届きました。
とても良い感じに染まっていて満足しています。
また頼もうと思います。
本当にありがとうございました。
こうした声が、私たちの染めへの想いを支えています。
染め直しをご検討中の方へ
「もう着られないかな」と思ってしまう服こそ、染め直しによって新しい命を吹き込めるかもしれません。
服は、ただの布ではなく、その人の時間や気持ちが刻まれた存在です。
その価値をまるごと包み直すように、私たちは一着一着、手で染めています。
染め直しについてわからないこと、不安なことがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。
お問い合わせフォーム、InstagramのDM、メールなど、どこからでも歓迎です。
お問い合わせ・ご依頼について
- 初めての方でもわかりやすく説明いたします
- 納期・費用・色味なども個別にご相談可能です。
- 体験教室も実施中(大阪・池田の工房にて)
お気軽に、あなたの大切な服のことをお話ししてくださいね。
まとめ
思い出の服を、もう一度あなたの暮らしへ。
天然染料のやさしい力で、染め直してみませんか?
色が変わることで、服に新しいストーリーが生まれます。
「思い出の服が、また“着たくなる”一着になりますように」
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