デニムを蘇らせる「憲法黒」とは? 伝統の黒染めで新たな魅力を

デニムパンツは、履けば履くほどに独特の風合いが増し、愛着が湧いてくる素材ですよね。
特に、経年によって色落ちした部分やダメージがデニムの個性となり、使い込むごとに自分だけの1本になっていく魅力があります。


しかし、その一方で、「色が褪せてしまった」「もう少し鮮やかな色味を取り戻したい」と感じることもあるかもしれません。
そんな方におすすめなのが、伝統的な「憲法黒」や「藍染」への染め直しです。

今回は「憲法黒」についてお話をさせて頂きます。

「憲法黒」とは、京都の剣術家である吉岡憲法が広めた、非常に堅牢な黒色で、江戸時代から続く歴史ある染色技法です。
この技術を用いて、色褪せたデニムを新たに蘇らせることができるのです。
今回ご依頼いただいたデニムパンツも、経年劣化で色が薄くなっていましたが、憲法黒で染め直すことで新たな命を吹き込むことができました。

ただし、デニム製品に施されている加工には注意が必要です。
特に、ブラスト加工(あえてダメージや色落ちをさせる加工)等が施されているものは、染め直しを行うと、加工部分も同じように染まってしまうため、加工跡を残すことは難しくなります。

これまでの色落ちやダメージが気に入っている場合は、その点も踏まえてご依頼いただければと思います。

憲法黒の染色プロセス:藍染と草木染めの融合

憲法黒の特徴は、ただの黒ではなく、奥深い緑がかすかに見える、味わい深い黒色です。
この色は、重ねて染める染色方法によってより奥深い色になります。。
一般的な黒染めとは異なり、いくつもの工程を経て完成するのが憲法黒の魅力のひとつです。

まず、デニムを藍染で縹色(はなだいろ)に染めます。
この藍色は、淡い青みがかった色で、そこからさらに草木の染料を重ねていくことで、憲法黒特有の深い色合いが生まれます。

次に、草木染めの楊梅(ヤマモモ)の染料を使って、海松色(みるいろ)という深い緑色を染め重ねます。
この時点で、デニムは深い緑色を帯びた独特の色合いを持つようになります。

さらに、その上から鉄媒染を施すことで、憲法黒特有の深みのある黒色が完成します。
鉄媒染は、染料をより布地に定着させ、堅牢度を高める役割も持っています。

憲法黒の魅力は、この複雑な染色工程により奥深い色に染まることにあります。
藍と草木染め、そして鉄媒染を組み合わせることで、奥行きのある深い黒色が完成するのです。

表面は黒に見えつつも、光の加減や角度によってはかすかに緑がかった色味が浮かび上がるという、他の黒染めの染料にはない独特の味わい深い色になります。

憲法黒の歴史と名前の由来

憲法黒は、京都の剣術家・吉岡憲法によって広められた黒色として、その名前が付けられています。
吉岡憲法は、黒染めを使った剣術家として知られており、特にこの黒染めが「刀を通しにくい」という噂が広まったことで、その黒色は非常に人気を集めました。
もちろん実際に刀を通しにくいかどうかはさておき、その堅牢な黒色は多くの武士や職人たちの間で評判となり、吉岡家の黒染めは大いに繁盛しました。

江戸時代を通じて、憲法黒は人気の高い色となり、京都を中心に多くの染め屋が吉岡家の技術を学びました。
その結果、「吉岡」という名前は染め屋の代名詞となり、京都では多くの染め屋が憲法黒を取り扱うようになりました。

憲法黒は、元々は檳榔子(びんろうじ)という植物を染料として使っていましたが、檳榔子は手に入りにくく、非常に高価なため、次第に楊梅(やまもも)が代わりに使われるようになりました。
この楊梅は、草木染めの中でも堅牢度が高く、藍染との相性が良いため、憲法黒を作り出すのに最適な染料として定着しました。

憲法黒は、単に黒色を追求したものではなく、藍染と草木染め、そして鉄媒染の融合によって生まれる色合いです。
これによって、単調な黒ではなく、奥深い緑がかった黒色となり、その色の堅牢さも他の染色に比べて高くなります。
デニムなどのアイテムにこの憲法黒に染め直すことで、ただの黒染め以上の価値を持つ特別な1着になると思います。

藍染め・草木染めを使った染め直しのご依頼を承っております。

貴久では、藍染め・草木染めを使った染め直しのご依頼を承っております。
今回ご依頼いただいたデニムパンツも、色褪せてしまった部分が憲法黒で見事に蘇りました。

この黒染めは、ただ黒く染め直すだけでなく、奥行きのある深い黒色が特徴です。
そのため、デニムパンツも単なるリペアにとどまらず、より味わいのある仕上がりになります。

もちろん、デニムだけでなく、さまざまなアイテムに憲法黒を使用した染め直しが出来ます。
大切なアイテムを長く使い続けたいという方にとって、憲法黒は非常におすすめの色です。
色褪せやダメージを気にせず、再び新品のようにご着用して頂くことができます。

デニムのように、日常使いで傷みやすい素材も、憲法黒で染め直すことでもう一度気分を新たに使っていただけます。

貴久では、お客様のご要望に合わせて、最適な染め直し方法をご提案いたします。
色褪せたデニムや、他のアイテムも含めて、ぜひお気軽にご相談ください。
憲法黒の深みのある黒色や草木染めの奥の深い優しい色で、あなたの大切なアイテムを再びお使い頂けるお手伝いをさせていただきます。

染め直し│ 草木染め・藍染めで染め直しをさせて頂いております。

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