ウール素材のロングトレンチコートを鈍色に染め直す魅力と技術

ウール素材のロングトレンチコートを鈍色に染め直す魅力と技術

1. はじめに

染め屋 貴久では、お客様からお預かりしたウール素材のロングトレンチコートを、落ち着いた風合いが魅力の鈍色(にびいろ)に染め直しました。

ウールは、その高級感や優れた保温性から多くの人に愛される素材ですが、取り扱いが難しく、特に染め直しの際には慎重さが必要です。
色を変えることで服の印象が大きく変わるため、「大切な服を長く愛用したい」「落ち着いた色合いにしたい」といったご要望に応えることができます。

本記事では、以下の点について詳しくご紹介します。

  • ウール素材の特性と扱い方
  • ウールが縮みやすい理由とその対策
  • 鈍色への染め直しの魅力と技術

    について詳しくご紹介します。
ウールコート染め直し

2. ウール素材の特徴とメリット・デメリット

(1) ウール素材のメリット

ウール素材には、以下のような優れた特徴があります。

  • 高い保温性:ウール繊維は空気を多く含む構造をしているため、寒い季節でもしっかりと暖かさを保ちます。
  • 汚れに強い:天然の撥水性があり、水や汚れを弾きやすい特性を持っています。
    ちょっとした汚れなら軽く払うだけで落とせることもあります。
  • シワになりにくい:繊維が自然に弾力性を持っているため、折り目がついても時間が経つと元に戻りやすいという特徴があります。
  • 美しい風合い:ウール独特の柔らかな質感と自然な光沢があり、上品で高級感のある仕上がりになっています。

(2) ウール素材のデメリット

しかし、ウールには以下のようなデメリットもあります。

  • 縮みやすい:適切な温度管理をしないと、繊維が縮んでサイズが変わってしまいます。
  • フェルト化(硬化)しやすい:摩擦や温度変化によって繊維が絡み合い、硬くなってしまうことがあります。
    一度フェルト化すると元に戻すのが難しくなります。
  • 洗濯が難しい:水に弱いため、一般的な洗濯機では劣化しやすく、基本的には ドライクリーニング推奨 となります。
  • 虫食いのリスク:ウールは 虫が好む繊維 のため、長期間保管する際には防虫剤の使用などの対策が必要です。

3. ウールが縮む理由と対策

ウールコートを染め直し前
ウールコートを染め直し後

(1) ウールが縮む仕組み

ウール繊維の表面は、スケール構造(うろこ状の表面)をしており、水分・熱・摩擦の影響で絡み合い、縮んでしまいます。
この状態を「フェルト化」と呼び、一度硬くなってしまうと元に戻すのは困難です。

特に 高温や強い摩擦 によってスケールが閉じ、繊維同士が密着してしまうため、洗濯や染め直しの際には慎重な作業が求められます。

(2) ウールが縮まないようにするには?

ウールの縮みを防ぐためには、以下のポイントを意識することが重要です。

  • 🔹 水洗いを避ける:できるだけドライクリーニングを利用し、水分による収縮を防ぎましょう。
  • 🔹 低温での管理:染める時は35℃以上に水温が上がらないように水温の管理をする。
  • 🔹 摩擦を減らす:強くこすったり、揉んだりしないように注意。
             染める際の洗濯は洗濯機を使わずに手洗いで押し洗いをする。

貴久ではウール素材を染め直すときは上記のことを心がけています。
それでも多少の収縮や硬化は起きる可能性はあります。

4. 縮んだウールを戻す方法

もし ウール素材が縮んでしまった 場合は、以下の方法である程度回復できる可能性があります。

  • スチームアイロンを使用:適度な蒸気をあてながら、優しく形を整えることで繊維を伸ばす。
  • コンディショナーを使用:水に少量のヘアコンディショナーを溶かし、繊維を柔らかくすることで縮みを緩和する方法。
  • 専門の修復サービスを利用:完全にフェルト化してしまった場合は、自力での修復が難しいため、専門業者に相談するのがベストです。

5. 鈍色への染め直し:仕上がりと技術

ウールコート染め直し前
ウールコート染め直し後

(1) お客様のご要望とコートの状態

今回お預かりしたトレンチコートは 明るめのカラー でしたが、落ち着いた色合いを求めるお客様のご希望により、鈍色(にびいろ) へと染め直しました。

(2) 鈍色(にびいろ)とは?

鈍色(にびいろ)は、日本の伝統色のひとつで、ダークグレーやグレーベージュに近い落ち着いた色合いです。
控えめながらも上品な印象を与え、シンプルなデザインのコートにもよく馴染みます。
フォーマル・カジュアルどちらにも合わせやすく、大人の洗練されたスタイルを演出できます。

(3) 染色技術の紹介

今回の染め直しでは、以下の様に染め直しをしました。

  • 🔹 使用した染料:矢車附子(やしゃぶし)を活用。
  • 🔹 媒染方法:鉄媒染を施し、深みのある鈍色を表現。
  • 🔹 温度管理:フェルト化を防ぐため慎重に温度を調整。

いままでの経験と技術によって、ウールの風合いを損なうことなく、美しく深みのある鈍色 に仕上げることができました。
ただすべてのウールがこのようにうまく染まるわけではないのでご注意をお願いします。

6. 貴久の染め直しサービスのご案内

貴久では、染め直しや染め替え を承っております。

  • 🔹 「お気に入りの服を長く着たい」
  • 🔹 「色を変えて新しい雰囲気を楽しみたい」

そんなお客様の想いを大切にし、一点一点、丁寧に染め上げます。染め直しをご希望の方は、お気軽にご相談ください。
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7. まとめ

  • ウールは保温性や耐久性に優れるが、縮みやすく扱いが難しい素材です。
    縮みやフェルト化を防ぐには、適切な温度管理と摩擦を抑えることが重要です。
  • 鈍色は落ち着いた雰囲気を演出でき、ウール素材との相性が抜群。
  • 染め直しをご希望の方は、ぜひ貴久にご相談を。

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