「お気に入りの服が、なんだか色あせてしまっている…。そんな時、あなたならどうしますか?」
天然染料を使った「染め直し」は、そんな服をもう一度着られるようにする手仕事です。
ただの修繕ではなく、まるで新しい命を吹き込むような体験。
特に草木染めは、自然の植物や土から色を引き出して、やさしく布を染めていく奥深い世界。
この記事では、草木染めによる「染め直し」の仕組みを少し専門的に、でもわかりやすくご紹介します。
「なんで草で染まるの?」「どんな布でも染め直せるの?」「媒染ってなに?」
そんな疑問をお持ちの方に向けて、染め直しの工程や注意点、そして色の不思議な変化まで、しっかりお伝えしていきますね。
目次
草木染めってどうやって色を出しているの?

草木染めとは、植物に含まれる色素を取り出し、布に定着させていく技法です。
けれど、「花の色=染まる色」ではないのが、草木染めの面白いところ。
たとえば、赤い花から赤が出るとは限りません。茶色くなったり、黄色っぽくなったり…。
実際の染め液の色は、植物の中にある色素の種類で決まるんです。
草木染めの主な色素成分
- フラボノイド系(黄色〜茶系):玉ねぎの皮、栗のいが、柿の葉など
- タンニン系(灰〜黒系):五倍子(ごばいし)、渋柿、茶葉など
- アントシアニン系(赤紫〜青):紫キャベツ、ブルーベリー、藍の生葉
- カロテノイド系(橙〜黄):マリーゴールド、にんじん葉など
媒染ってなに?草木染めの“色を定着させる魔法”

媒染とは、金属の力を借りて、色素を布に定着させる工程のこと。
ミョウバン・鉄・銅などを使った液に布を浸けると、色素と金属イオンが結びつき、色が安定します。
媒染による色の変化の例
- 玉ねぎの皮 × ミョウバン → 明るい山吹色
- 玉ねぎの皮 × 鉄媒染 → 深みのあるグレーブラウン
- 紫キャベツ × 酸性pH → ピンク系
- 紫キャベツ × アルカリ性pH → 青緑系
媒染ごとの特徴と使い分け
- ミョウバン(アルミ媒染)
黄色やオレンジ系の発色が得意で、植物繊維・動物繊維どちらにも使いやすい。
ミョウバン自身に色がないので、発色をよくするのみです。 - 鉄媒染
黒やグレー、渋い茶系向き。ただし濃度が高すぎると生地を傷めやすいので注意。 - 酢酸銅(銅媒染)
緑系の発色に向き、よもぎやビワの葉などと相性が良い。
染め直しを成功させるために大切なこと
1. 元の色の影響を理解する
- 白・生成り:発色が鮮やかで理想的です。白色は白に染めているために奇なりに比べて薄く仕上がる傾向にあります。
- 淡い色:元色の影響を受けるが濃い色で重ねれば影響を受けにくいです。
- 濃色(黒・紺など):別の色に染め直しはほぼ困難です。色褪せたものを同色で染め直すことになります。
2. 素材の種類と相性を見極める
- 植物繊維(綿・麻):タンニン系と相性◎、下処理が必要です。
貴久では先媒染(ミョウバン)をしています。 - 動物繊維(ウール・シルク):発色が良いが、熱やpHに弱い。温度管理が重要です。
温度・時間・pH…草木染めは“見えない管理”が要
- 煮出し温度と時間:染料ごとに最適条件があります。
- 染液のpH:酸・アルカリで色が変化します。
- 媒染液の種類と温度:媒染液の種類や濃度によって色が変わるので素材に応じて調整します。
- 染めと媒染の時間管理:素材によって異なるが出来るだけ同じ条件にして同色に近づけるようにします。
染め直しで起こりがちな失敗とその対処
- 色ムラ:草木染や藍染めは色ムラも特徴になります。
大きく色ムラにしないためには、布の浸し方や温度の不均一が原因。精練と優しい撹拌で対応。 - 思った色にならない:素材・染料・媒染の組み合わせに配慮し経験値で調整。
- 繊維のダメージ:高温・長時間の影響を避け、素材に応じた処理をしています。
特にウールやシルク、レーヨンなどは注意が必要です。
よくいただくご質問

Q. 漂白剤で色が抜けた服、染め直せますか?
→ 天然繊維であれば可能です。
本体との色差が激しかったりあまりに大きい部分が抜けていたりするとわかる場合があります。
Q. 綿50%ポリエステル50%のシャツも染まりますか?
→ 混紡の素材は天然繊維の割合が50%以上であれば、染めることが出来ます。
その場合ポリエステルの部分が染まらないために薄く上がる場合があります。
染まりにくいですが、ナチュラルなムラが出る場合もあり、それを楽しむ方も多いです。
草木染めの染め直しは、「思い出をつなぐ手仕事」です

服には、その人の思い出や暮らしの記憶がたくさん詰まっています。
色あせたり、汚れたりしても、「捨てる」以外の選択肢があることを、もっと知ってほしいと思っています。
草木染めの染め直しは、「モノを大切にしたい」「もう一度着たい」という気持ちに寄り添う手段です。
染め直しに込めている私の想い
私はアパレル業界で長年働いた後、「捨てる前にできること」に気づき、草木染めに出会いました。
染め直しは、技術以上に「思い出をつなぐ」文化的な力があると感じています。
「これでまた着られる」とお客様が喜ぶ瞬間が、何より嬉しいのです。
ご相談・お申し込みはこちら
現在、メールフォームやInstagramのDMから、染め直しのご相談を随時受け付けております。
- 小ロット・個別対応可能
- 色味や素材のご希望に合わせたご提案
- 写真を添えてのご相談も大歓迎
お気に入りの服が、また“着たくなる”一着になりますように。
そのお手伝いができたら、何より嬉しいです。
思い出の服を、もう一度あなたの暮らしへ

草木染めでよみがえった服は、思い出とともに新しい価値を持ちます。
大切なものを長く使う、自然とともに暮らす。
染め直しは、その願いを叶えてくれる手しごとのひとつです。
「これからも着ていきたい」
「捨てたくないけど、もう着られない」
そんな服があれば、ぜひ一度ご相談ください。
あなたと、あなたの大切な服に再び出会える日を、楽しみにしています。
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