【春支度】汚れたトレンチコートを「憲法黒」で一生モノに。
ポリエステル混もOK?プロが教える「大人の染め直し」術

染め直し ビフォーアフター憲法黒

みなさま、こんにちは!
大阪・池田市にある天然染料と染め直しの店「貴久(Kikyu)」です。

本日、2026年2月3日は「節分」ですね。 「鬼は外、福は内!」 みなさまのお家では、豆まきの準備は万端でしょうか? 暦の上では明日から「立春」。まだまだ寒さは厳しいですが、日差しの明るさに少しずつ春の気配を感じる今日この頃です。

さて、春が近づくと気になり始めるのが「スプリングコート」の準備です。 冬の重たいウールコートを脱いで、軽やかなトレンチコートやステンカラーコートを羽織る季節はもうすぐそこまで来ています。

でも、久しぶりにクローゼットから愛用のコートを出してみて、こんな風にガッカリした経験はありませんか?

「あれ? お気に入りのベージュのコート、襟元が黄ばんでいる…」 「袖口の黒ずみが、クリーニングに出しても落ちていない…」 「全体的に色が褪せて、なんとなく疲れた印象に見える」

春の定番であるベージュや生成りのコートは、顔周りを明るく見せてくれる反面、皮脂汚れや日焼け、食べこぼしのシミなどが最も目立ちやすい色でもあります。

「形は気に入っているのに、汚れているから着られない」 「捨てるのはもったいないけれど、このまま着るのも恥ずかしい」

そんなお悩みをお持ちの方へ。 今年は「捨てる」でも「買い換える」でもなく、「染め直して育て直す」という選択肢はいかがでしょうか?

今回は、貴久が自信を持っておすすめする「トレンチコートの染め替え(リメイク)」について、プロならではの視点で詳しく解説します。

特に、大人の品格を上げる「憲法黒(けんぽうぐろ)」の魅力や、意外と知られていない「化学繊維との付き合い方」についても掘り下げていきます。

ぜひ、温かいお茶でも飲みながら、ゆっくりとご覧ください。


なぜ、トレンチコートの汚れは「染め替え」が正解なのか?

1. 「汚れ」を隠し、新しい魅力を引き出す

ベージュのコートについた古い黄ばみやシミは、残念ながらクリーニングの漂白技術でも完全には落ちないことが多いです。
無理に落とそうとすれば、生地そのものを傷めてしまうリスクもあります。

そこでおすすめなのが、「今の色よりも濃い色」を入れること。 物理的に汚れの上から色を重ねることで、シミを目立たなくさせます。
これは単なる「補修」ではありません。
明るい色のコートをシックな濃色に生まれ変わらせることで、まるで新品のコートを買ったかのような新鮮な感動を味わうことができます。

2. 化学染料にはない「経年変化」を楽しむ

一般的なクリーニング店の黒染め(化学染料)は、均一でマットな黒に仕上がります。そ
れはそれで綺麗ですが、どこか平坦で面白みに欠けると感じる方もいるかもしれません。

私たち貴久が使うのは、植物や土から生まれた「天然染料」です。
天然染料で染めた服は、光の当たり方によって複雑な色の奥行きを見せます。
そして、デニムのように着込めば着込むほど、身体に馴染んで色が育っていきます。

「古くなったから捨てる」のではなく、「古くなるほど味がでる」。
そんなヴィンテージのような一着を、ご自身の手で作ることができるのです。


貴久のイチオシ!春コートを格上げする「憲法黒」の美学

今回のテーマであるトレンチコートの染め替えにおいて、私たちが最もおすすめしたい色が「憲法黒(けんぽうぐろ)」です。

「憲法黒」とはどんな色?

「黒染め」と一口に言っても、その色味は様々です。 憲法黒は、かつて江戸時代に剣術家の吉岡憲法が広めたと言われる伝統的な黒色。植物のタンニンと鉄分を反応させて染め上げるこの色は、真っ黒(漆黒)ではなく、「ほんのりと茶色や紫色を帯びた、温かみのある深い黒」です。

詳しくは下記のブログを。

デニムの染め直しなら「憲法黒」!藍と草木染めが生み出す奥深い黒の魅力

デニムを蘇らせる「憲法黒」とは? 伝統の黒染めで新たな魅力を デニムパンツは、履けば履くほどに独特の風合いが増し、愛着が湧いてくる素材ですよね。特に、経年によっ…

なぜトレンチコートにおすすめなのか?

トレンチコートは元々、軍用コートをルーツに持つアイテム。
憲法黒の持つ力強くも渋い色合いは、トレンチコートの持つ「機能美」や「男前なディテール」と相性が抜群です。

真っ黒すぎないため、春先に着ても重くなりすぎません。
ビジネススーツの上に羽織れば知的に、デニムと合わせれば洗練されたカジュアルに。
「大人の余裕」を感じさせる、極上の仕上がりをお約束します。

他にもモッズコートもお勧めです。

モッズコートを鈍色にリメイク!染め直しのポイントと仕上がり例

人気の鈍色に染め直されたモッズコート。元色が与える仕上がりの違いや、染料「矢車附子」の魅力をご紹介。

他のおすすめカラー

もちろん、憲法黒以外にも素敵な色が揃っています。

  • 縹色、印度藍(いんどあい): 爽やかなジャパン・ブルー。カジュアル派に人気で、デニムのような色落ちが楽しめます。
  • 鈍色、矢車附子(やしゃぶし): グレーとベージュが混ざったような、落ち着いたアースカラー。元のベージュ色を活かしつつ、トーンを落としたい方に。

染め直し 帆布のかばんを鈍色に染め直しました。

貴久では、草木染め・藍染などの天然染料のみを使って染め直しをしています。 草木染め、藍染めを合わせて全部で11色の色からお選びいただき染め直しをさせて頂いておりま…

ここがプロの技!「素材」と「仕上がり」の深い話

お客様からよくいただくご質問に、 「私のコートはポリエステルが入っているけれど、染められますか?」 というものがあります。

ここからは少し専門的なお話になりますが、失敗しないためにぜひ知っておいていただきたいポイントです。

素材の「50%ルール」

結論から申し上げますと、天然繊維が50%以上含まれていれば、染め直すことは可能です。

染料は、綿(コットン)や麻(リネン)、レーヨンなどの天然由来の素材には入りますが、ポリエステルやナイロンなどの化学繊維には入りません。

例えば、お手持ちのコートのタグを見てみてください。

  • 「綿 100%」の場合: 全体がしっかりと均一に染まります。最も濃く、はっきりとした色を楽しめます。
  • 「綿 65% / ポリエステル 35%」の場合: ここが面白いところです! 綿の65%部分は染まりますが、ポリエステルの35%部分は元の色(ベージュなど)のまま残ります。 するとどうなるか? 全体的に、濃い色の中に細かい白い霜降りが混ざったような、「杢(もく)調」や「シャンブレー風」の仕上がりになるのです。

これを「染まりきらなかった」と捉えるか、「味わい深いテクスチャになった」と捉えるかはお客様次第ですが、私たちはこの混紡ならではの風合いを強くおすすめしています。
のっぺりとした単色にならず、奥行きのあるヴィンテージ古着のような、非常にこなれた雰囲気になるからです。

縫い糸(ステッチ)のアクセント

多くの既製服では、生地は綿でも、縫い糸には丈夫なポリエステル糸が使われています。
そのため、生地を黒く染めても、ステッチ(縫い目)だけは元の白い色のまま残ることがあります。

これがアクセントになり、ワークウェアのようなカッコよさが生まれます。
「ステッチが浮くのが嫌」という方はご注意が必要ですが、「それも味」と楽しめる方には最高のスパイスになります。


ご依頼の前に必ずチェック!「本革」と「撥水加工」の落とし穴

大切なコートを台無しにしないために、ご依頼前に必ず確認していただきたい2つの重要事項があります。

1. 本革(レザー)パーツは必ず取り外してください

トレンチコートには、ベルトのバックル、ボタン、袖のストラップ、あるいは「肘パッチ」などに本革が使われていることがあります。

染色の工程では、高温のお湯を使用します。 本革をお湯につけると、タンパク質が変性し、カチコチに硬化したり、ギュッと縮んでしまったりします。
一度こうなってしまうと、二度と元には戻りません。

ご面倒をおかけしますが、ご依頼の際はお客様ご自身で、本革パーツを全て取り外してからお送りいただくようお願いいたします。
(※取り外し・取り付けが難しい場合は、お近くのお直し屋さんにご相談されることをおすすめします)

2. 強力な撥水(はっすい)加工にご注意

スプリングコートという性質上、雨を弾くための「撥水加工」が施されている場合があります。
表面で水を弾いてしまうと、当然ながら染料も弾いてしまい、色が入らずまだら模様(染めムラ)の原因になります。

長年着用して撥水効果が薄れている場合は問題ないことが多いですが、直近でクリーニング店にて撥水加工をされた場合は、染め直しができない可能性があります。
水を一滴垂らしてみて、コロコロと弾くようであれば要注意です。


貴久の染め直しで、春を迎える準備をしませんか?

新しい服を買うことは簡単です。
今の時代、安くてそれなりに良い服はたくさん溢れています。

でも、 「袖を通した時のしっくりくる感じ」 「旅行に行った思い出が詰まった一着」 「頑張って奮発して買った時の高揚感」 そういった服に宿る記憶までは、買い換えることはできません。

貴久の染め直しサービスは、お客様の大切な記憶ごと、服を未来へ繋ぐお手伝いです。

「憲法黒」でクールに生まれ変わらせるもよし。
「印度藍」で春の空気を纏うもよし。

もし、クローゼットに眠っているトレンチコートがあるなら、ぜひ一度私たちにご相談ください。
素材の確認や、仕上がりのイメージなど、LINEやメールでお写真を送っていただければ、専門スタッフが丁寧にアドバイスさせていただきます。

春本番まであと約1ヶ月。 今から動き出せば、桜が咲く頃には、世界に一着だけの「新しい相棒」と一緒にお出かけできますよ。

皆様からのご相談を、大阪・池田の工房にて心よりお待ちしております。

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こちらから染め体験のご予約もして頂けます。

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